現実男に妄想

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  ――ただいま―― 「あのさ、早く降りてくれないかな」  正面に立っていた先輩から、冷たくて感じ悪い声が聞こえてきた。  てか、何で先輩が私の前に立ってるの? てか、何で電車に乗ってるの? まだ、学校出たばっかりだよ。先輩に、手を引いてもらってさ。  あれっ、私ってば、電車のドア横の手摺を握ってる。さっきまで、先輩の手を握ってた筈なのに。 「だからさ。早く降りてくれないと、こっちが降りるのに邪魔なんだけど」 「あっ、すいません」  ホームに降りると、次々と人が降りてきて。結芽は、ホームの端っこに押し出されちゃった。  あれっ、先輩どこ。 「あっ、先輩……」  先輩はもう、階段のところにまで歩いて行っちゃってた。  でも、声が違っていたんだよなぁ。そりゃ、妄想通りにはいかないよ。でも、そんな事を気にして行動しなきゃ。恋なんて、絶対に始まったりしないよね。
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