12人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
電車が段々とゆっくりになってきて、結芽が降りる駅へと入ってく。これだけ、密着してたんだし。もしかしたら、妄想みたいに斎藤くんも一緒に降りてくれないかな。
そしたら、下りの電車に乗っちゃおうかなとか思っちゃったりして。
『――ご乗車のお客さまは、お客さまが降りてからお乗りください』
あっ、降りなきゃ。
降りる直前に、もう一度だけ斎藤くんの顔を見てアピールしてみた。でも、斎藤くんは降りる気配すらない。
何も話してないもん、仕方ないよね。
「ああ、やっと降りるよ。何か、ブツブツ言っててキモいんだよな。この女……」
「えっ、何っ?」
降りる瞬間、斎藤くんがそう言った。
キモいって、結芽の事?あり得なくない。普通、思ったって普通は口に出さないよね。
窓越しに遠くなってく、斎藤くんのイケメンの顔が嫌な顔に見えた。どうしてあんな顔が、イケメンに見えたんだろ。
最初のコメントを投稿しよう!