大人の男に妄想

9/28

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
   携帯電話を出して、学校に電話して事情を説明した。それだったら駅に行って自転車屋で、パンク修理してから学校に行こう。 「でもなぁ、自転車での五分って、歩くと十五分はかかるんだよなぁ」  しかもパンクした自転車を押して歩いたら、どんだけ歩くんだろ。足が速くたって、何の関係も無いよね。 「いらっしゃい、お嬢ちゃん」  駅の裏の方にある、小さな小さな自転車屋。自転車は売ってなくて、パンクとか修理だけしてる、おじいちゃんがしてる店。  高校に入学して、最初の日曜日にパンクして、ここで修理してもらった。 「後ろの、タイヤがパンクしちゃって」 「ああ、見りゃ分かる」 「ごめんなさい……」  何か、謝っちゃった。  おじいちゃんは、怖そうじゃないし結芽のおじいちゃんより、おじいちゃんっぽい。白髪の感じも、おじいちゃんっぽい。  とにかく、おじいちゃんなんだよね。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加