ようこそ、ボンビーガール

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ようこそ、ボンビーガール

 都内二十三区内にありながら、駅まで徒歩五分圏内。  1LDK、十二畳。それに加えて三畳の洋室もある。  普通に考えたら月々の家賃は十五万はするだろうそんな賃貸が――。 「四万円? これが……?」 「はい」  大家の口数の少なさに、雲母(きらら)(るな)は眉をひそめた。 「あり得ない……絶対なんかあるでしょ、この部屋! 誰か死んだとか、おばけが出るとか!」 「はい」 「はいじゃない!」  と、つっこんではみたものの、逆にすっぱりと言ってくれた方が納得する。  なるほど、ここは所謂『いわくつき』の物件と言う奴だろう。 「……でも、こんなにいい部屋が四万でいいなら……、アリかも……」 「はい」 「じゃあ、どういう曰くがあるの? それは聞かせて」 「実は、この部屋を借りた方は、みな……」  死んでしまった、とでも言うのだろうか。ぞっとした月は少しだけ背筋を寒気が走った。 「家賃が払えなかったのです」 「……なんですって?」 「ですから、月々四万円の家賃が、払えなかったため、出て行ってもらうことになったのです」 「そんなバカな。今時、アルバイトでもしてりゃ、月に四万くらい払えるでしょう?」     
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