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「……いつから無くなっていたんだろう……。それが分かればまだなんとかなるのに……」
手がかりがあまりにも少ない……。がっくりと脱力して、境内から参道を戻っていた時、狛犬の像を過ぎ去ろうとして――。
(! もしかして……)
ひとつ、思いついたことがあった。
月は駆けだすと、真っ直ぐにマヨヒガへのエレベーターに向かった。そこにはエレベーターガールの森岡奈和が居て、月の顔を確認すると、「地下行で、よろしいでしょうか」と確認した。
月はその確認に、肯定すると、エレベーターは不思議な照明と音響を醸し出して、マヨヒガへと降りていく――。
マヨヒガへと到着したと共に、月は真っすぐ、紅い橋を駆けた。タンタンと心地いい足音がする橋の先には、二人の青年が待ち構えるようにして立っていた。
「こんにちは! 阿形さん、吽形さん!」
「あっちが阿形だ」
「わっかんないんですもん! あの神社みたいに、どっちかいつも口開いてくれませんか!」
「だとさ、阿形」
「莫迦なこと言うな」
吽形がニタリと笑んでいた。あ、この人も笑うんだと密かに思ったが、阿形のほうは厳しい顔で月を見ていたので、黙っておいた。
「あやかしインベスティゲーションの、小娘だな。通っていいぞ」
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