あうん の こきゅう

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 そんなものはない。分かっているのは、三段目の一番下におみくじを結んだことだけ。 「三段目の一番下……、そこに、おみくじを結んだことだけは、間違いないけど……それ以外は……」 「なに?」 「もしや」 「ああ、まさか」  月のつぶやきに、阿形と吽形が何か思い出したような声を出したことに、月は食いついた。 「何? 何か知ってる?」 「おそらく……」 「多分……」 「「メイビー」」 (変なところでハモるな、この双子)  不愛想な表情をしている阿吽の青年に、内心でツッコミを入れながら、言葉の続きを待った。 「ここ数日、神社に幼い少女がやってくる。夕方前だ」 「女の子?」 「ああ、特に変わったところもない少女だが、身長が百三十五センチ程でな。一人で神社にやってくるので気にはしていた」 「……女の子が一人で神社に?」  百三十五センチ程というと、自分の幼い頃を思い出すと、小学三年生くらいだろうか。そんな年齢の時、わざわざ池袋の神社に行くだろうか? 他にも子供の興味を引く場所は、ここ池袋には沢山あると思えた。  そして、その身長を想像しながら、あることに気が付いた。  百三十五センチ――。  自分の手で、このくらいか、と計ってみる……。  目線を合わせるには、腰をかがめないとならない――そんな身長だ。     
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