モラトリアム

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「動機は犯人の口から聞けばいいのよ」 「キララちゃんは、行動派だね」 「女は行動力よ」 「……オレは、きみのことが、時折心配になるよ」  なんでもまずはやってみるというのが、月のモットーだ。  考える前にまずやってみる。だめなら、だめで失敗も経験になると思えば、悩んで結局しないよりは、成長に繋がるだろうというスタンスだった。  そんな月は、乾太郎には無鉄砲にも見えたかもしれない。 「ねえ、キララちゃん。明日は憑いていっていいかな?」 「明日は別に良いけど……そんなに心配しなくても大丈夫だよ」 「心配に決まってるだろ」  神妙な顔をして、乾太郎がきっぱりと言ったので、月は思わず黙ってしまって、彼と目があった。  真面目な顔をして、じっと見つめる彼の瞳は、真っ直ぐであり、強い。 「……かんたろ、なんでそんなに私に執着してるの? 私に憑りついてるから?」 「好きだから」 「……そ、それはまぁ御縁を大事にしなくちゃいけないあやかしとして、でしょ」  至極真面目に、乾太郎が好意を伝えてきたので、月のほうが恥ずかしくなって、話を誤魔化したくそんな風に言った。  あやかしは、縁を大事にする存在だそうだ。だから、月との縁があるからこそ好きだと言っているのだろう。     
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