モラトリアム

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「それでもキララちゃんは、自分のことよりも他者を労われる女の子だと、オレは思ってる」 「……」 「だから、好きなんだよ」 「……っ、あ、あんまりそういうの、面と向かって言わないで。恥ずかしい」 「ごめん、照れてる顔が見たかった」 「あほー!」  ビンタでもしてやろうかと思ったが、完全に顔が熱くなっていて、まんまと乾太郎の術中にはまっているのが分かり、月は丸くなって罵声を浴びせるだけになった。  乾太郎は少しだけ悪戯な笑顔をして、ごめんと軽く謝った。 「でも、本当にその女の子、何の目的があって神社でおみくじ泥棒なんてしてるんだろうか」 「うーん、分かんないな。私が子供だった時は、ゲームが好きだったから、友達と一緒にゲームしてたりとか、漫画読んだりで割とインドアだったし、外に遊びに行くのだって、レジャー施設とかゲームセンターばかりだったな」 「今時の女の子だね」 「まぁ、まだまだ十代の女子なんで、今時ですが何か?」 「どんなゲームしてたの?」 「あれ、意外。ゲームに興味あるんだ。貧乏神でも」  乾太郎が話題を膨らませようというのか、月のゲームの話題に触れてきたのは正直意外だ。あやかしが、人間のゲームに関心を示すのはなんだか、面白いと感じた。     
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