モラトリアム

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「ゲームってすごいんだねえ。オレ、以前の住人にゲームを見せてもらっても、スマホのガチャを回してるばかりであまり面白さを感じなかったなぁ」 「そーゆーゲームじゃないよ、ゲーム機でやるちゃんとしたお話と、ゲーム性がしっかり作られてるの。下手な映画より感動するよ。ほんと」  最近はすっかりゲームをしなくなったが、実家からゲーム機を持ってくればよかったかもしれない。そんな気持ちが湧いてきてしまった。  暇なときは、乾太郎とも一緒にプレイできるだろうし、ゲームをする貧乏神を見てみたい気もする。 「いつか、一緒に遊びたい」  と、本人も言ってくれた。なんだか、それが嬉しかった。あんまりゲームが好きだと人前では言いにくい。サブカルチャーであるゲームやアニメにハマっていることを大々的に宣言すると、なぜだか『レッテル』を貼られることがあるからだ。  そういう変な偏見を持っている人が、月は少しだけ好きじゃない。乾太郎はそんなタイプじゃないようで、それが安心した。まぁ人じゃなくあやかしではあるが。 「お風呂、入るよね。今日もオレが先でいい?」 「うん、後で入るよ。行ってらっしゃい」  なんだか、夫婦みたいなやり取りだなと、少し冷静になると恥ずかしくなった。  乾太郎がお風呂に入り、一人の時間になって、物思いに耽る。     
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