あやかしたちと少女たち

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 思いがけない行動に、月は声を潜めながらも腰を抱き寄せる乾太郎に、驚きの声をぶつけた。乾太郎は「しっ」と人差指を立てて、片目をつむり囁いた。 「あの子がもし犯人なら、オレたちの姿を見て警戒するかもしれないだろ? 恋人を装っていたら、警戒心も薄れるだろ」 「こ、こいびとって……!」 「ほら、キララちゃん。オレのほうに視線を向けて」  くい、と力を込められて、乾太郎の身体の中に身を寄せることになってしまった月は、見る見るうちに体温が上昇し、寒さなんて吹き飛んだ。寧ろ、汗ばむくらいに熱い。暑い、ではなく、熱い。顔に火が付くというのは、まさにこのことだろうか。  乾太郎の言葉には一理ある。あの少女を疑って、じっと観察をしていると、警戒して行動を起こさなくなってしまう可能性もある。  神社の境内で、一組の男女が都会の喧騒から逃れていちゃついている姿は、カモフラージュになるかもしれない。  乾太郎は、お互いに夢中になっているカップルを装うことで、おみくじの結び場なんか目もくれていないと見せつけるようにしようと、更に月に丹精な顔を寄せてきた。  すぐ傍に、乾太郎の熱いまなざしを感じ、腰を抱く彼の力強さに身体を預けたくなってしまう。     
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