あやかしたちと少女たち

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 思わず、ぽやぽやと思考が浮き上がってしまいそうになって、月は視線の置き場所に困った。真っすぐ乾太郎を見つめ続けるなんてできそうにない――。吐息だって、呼吸をすれば吹きかかるような距離感で、月は恥ずかしすぎて息を止めてしまっていた。 「……おみくじのところに来た」  乾太郎が、そっと月の耳たぶをくすぐるように、耳元で囁く。  少女が、結び場のところに来て、三段目に結ばれているおみくじを調べているようだったが、月はその様子を見れずに、乾太郎に抱きすくめられていた。 「か、かんた、ろ……」 「シッ……! おみくじに、手をかけてる……解いた……!」  乾太郎の声に、呆けそうになる頭を立ち直らせて、乾太郎の胸の中から抜け出すと、すぐにおみくじの結び場に視線を飛ばした。  右手につまんだ結われていたおみくじを、そっと手提げ鞄の中に隠すのを見て、月はすぐさまその少女に駆け寄った。 「ちょっと良いかな」 「っ……」  月が声をかけると、小さな女の子はビクンと露骨に反応し、驚きを示した。 「今、おみくじを解いたよね?」 「…………」  そっと優しく問いただしてみたが、少女は俯き、黙ったままだった。 「別に叱ろうとか、そういうのじゃないから安心して。ね? どうして、おみくじを解いているのか、知りたいの」     
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