あやかしたちと少女たち

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 それは嘘偽りない言葉だ。月たちは、少女に注意を促すために調査しているのではない。依頼されたとおり、おみくじを盗んでいく犯人と、その動機を調べたいだけだったから。  仮に、この少女に注意をするのであれば、それは依頼主の元三大師の神宮寺がやるだろう。 「……」  少女は、緊張した面持ちで、身体を固くして、やはり顔を上げない。  見たところ、小学校低学年だろうか。可愛らしいボブカットの少女はとても幼い顔立ちを強張らせていて、なんだか見ていると、こちらが申し訳ない気持ちになってくる。  阿形と吽形が言ったように、確かに可憐な少女だった。 「おみくじはね、神様の言葉なんだよ。それを目にした人々が、その言葉を受け取って、神様との縁を結ぶためにここに結んでいるんだ。それを取られてしまうと、神様も、おみくじを結んだ人も、困ってしまう」  ひざを折り、少女の目線の高さに視線を合わせた乾太郎が、優しげな瞳を細めて、にっこりと言った。 「あのね、私がおととい、ここに結んだおみくじ、昨日なくなってたの。あなたが、解いたのかな? 怒ってるんじゃないの。どうしてそんなことしてるのか、不思議なだけなんだ。教えてくれない?」  月も、できるかぎり、ゆっくり穏やかに、女の子に聞いてみた。  少女は、ちらりと乾太郎と月を見て、そして鞄にしまったおみくじを、そっと取り出し、月に手渡した。     
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