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「ごめんなさい」
「気にしないで。本当に怒ってたりするわけじゃないの。私、探偵なのよ」
少しおどけた調子でそう言った。
乾太郎は「探偵じゃなくて、調査員」と呟いたが、月は無視した。
「たんてい?」
少女が驚いたように、月を見つめた。クリクリした瞳が明るくて、魅力的な少女だ。さぞ、男の子にモテるだろうと思った。
「うん、かっこいいでしょ」
「探偵って、ほんとにいるんだ」
「れっきとした職業だよ」
少女は探偵を、架空の存在だと思っていたらしい。その気持ちは少し分かる。人気の探偵漫画で、その存在は知っていても実際に探偵と遭遇する機会なんてほとんどない。
月だって、小さい頃は探偵に憧れていた気持ちあった。
ともかく、少女の子供心を刺激するには十分だったらしい。少女は、もう一度謝ってから、事情を話し始めた。
「あのね……。おみくじ、燃やされるから……助けてたの」
「燃やされる?」
「お焚き上げのことかな」
月と乾太郎は顔を見合わせた。
神社で結ばれたおみくじが、その後どうなるのかを知っている人はあまりいないかもしれない。
月もその一人だった。乾太郎から「お焚き上げ」の単語を聞かされても、きょとんとしていた。
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