奇妙な同居生活

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 そういう輩相手なら、一喝でもして、叩き潰してやろうと張り合いもあったのに、この貧乏神ときたら、懐っこくて甲斐甲斐しい。 「ねえ、どうしてこの部屋に憑りついてるの? なんか理由があるの?」 「良い部屋だから」 「単純すぎるぅ――!」 「あ、そうだ。お風呂入る? 沸かそうか」 「えっ……うん、入る、けど」  時刻は現在夜十時。九時にはクタクタで食事も摂らずに寝ようとしていたのに、この貧乏神が出てきて、すっかり予定が狂った。  ……狂ったが、とても正常な人並みの生活スタイルをなぞらせてくれるようだった。それが少しだけ、嬉しかった。きっと、初めての一人暮らしで寂しさがあったからかもしれない。  乾太郎は手早くバスルームに行くと、湯沸かしのコンソールパネルをセットした。自動で風呂が沸き上がるシステムだ。オール電化のこのマンションは基本的にボタン操作で何でもできる。 「三十分もすれば沸くよ」 「あ、ありがと……」  なんだろうか、この家庭的な貧乏神は。一家に一台、いや、一匹? 一人? 貧乏神。 「オレも入りたいんだけど、いいよね」 「えっ!?」 「あ、一緒に入るって意味じゃないよ! キララちゃんの後に入るから」 「えぇぇえっ?! 貧乏神も風呂に入るの?」 「風呂に入るし、ごはんも食べる。布団で寝るし、トイレもする」 「もうただの人間じゃん……」     
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