あやかしたちと少女たち

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「結われたままだとここはおみくじで溢れかえるだろう? だから神主さんが定期的に、結われたおみくじを『お焚き上げ』するんだよ。……その子のいうとおり、燃やすわけだ」 「あたし、おみくじが燃やされるの、知って……、嫌だったから……」  お焚き上げは、神様に献上するための浄化作業だ。しかし、幼い少女には単におみくじを焼却処分しているようにしか思えなかったのかもしれない。  だから、少女は燃やされてしまうおみくじを、その前に解いて持ち去っていた、ということらしい。 「……おみくじが燃やされるのが、嫌だったんだ?」 「うん。……おじいちゃんのうただから」 「……おじいちゃんの、うた?」  ぽつぽつと語り出す少女に、月はゆっくりと話を促してあげた。拙い口調で、舌足らずに自分の考えをまとめながら、少女は『動機』を教えてくれた。 「あのね、おみくじの歌、おじいちゃんが作ったの」 「おみくじの歌?」 「……ああ、なるほど、和歌のことか」  乾太郎が合点がいったように、頷いていたが、月は「はて?」と何のことやら首をかしげる。  そんな月に、乾太郎が、受け取ったおみくじを見てごらん、と微笑む。  人のおみくじの内容を盗み見るのは、なんだか気が引けたが、月は畳まれているおみくじを開き、内容を確認した。     
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