あやかしたちと少女たち

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 中吉で、待ち人だとか恋愛だとかの項目に、あまり見慣れない古い表現で、運勢の内容が記載されている。何の変哲もないおみくじの内容だった。  月は、普段ならおみくじの中身をそれで読み終わる。  だが……、おみくじの一番下部に、短歌が記載されているのに気が付いて、少女を見つめた。 「歌……、短歌が書いてあったんだ」 「多くの人は、おみくじの『運勢』に気を取られがちで、そこに書かれた短歌を気にしないことがある。その短歌も含めて、おみくじなんだよ」 「この短歌を、あなたのおじいちゃんが作ったの?」 「うん」  少女のその時の顔は誇らしそうで、きっとおじいちゃんのことが大好きなんだろうと窺えた。 「かんたろ、私全然おみくじのこと、分かってなかったんだけど……、この和歌って昔のすごい歌人の詩なんじゃないの?」 「いいや、違う。おみくじに書かれている詩というのは、別に有名な句ってわけじゃないのさ」 「おじいちゃんが、つくったの」  てっきり、おみくじの和歌は、昔の偉い人が遺した有名な詩を載せているのだと思い込んでいたが、どうやらその想像は間違っていたらしい。  おみくじに書かれている和歌は、現代に生きる人が制作しているのだ。それを、この少女の祖父が行っているのだろう。     
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