あやかしたちと少女たち

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 実際に歌を作ったのか、おみくじを製造する会社に勤めているだけなのかは分からなかったが、少女は、おみくじの和歌を、おじいちゃんが作っていると信じていることが、重要だった。 「おじいちゃんが作った詩が、燃やされるのが、嫌だったんだ」 「……うん」  これで動機が分かった。おみくじの『縁』を解いていた犯人は、この少女で間違いないらしい。  あとはこの事実を、元三大師に報告するだけだ。あとの処理は、彼がする約束になっている。 「白波の 寄せては返す 長閑さと 揺れる浮藻や 夢のまにまに」  まったりと染み入るように詠った乾太郎に、少女も続いて「まにまにー」と笑った。 「まにまに、すき」  ニコニコと笑う少女は、その詩の響きがとても気に入っているらしい。意味まで理解しているのか分からないが、幼い頃というのは感覚で物を好きになるものだ。少女はその詩の音が大好きなのだろう。 「ど、どういう意味の詩?」  あまりそういった教養がない月には、詩の意味がとらえきれず、おみくじの和歌をまじまじと見つめて、眉を寄せてしまった。 「そのまんまだと思うよ。春ののんびりした日に、海辺で波に揺れる海藻を見てたら、夢心地になったって詩だろう」 「え、随分とノンビリした詩なんだね。おみくじに書いているくらいだから、説教めいた詩なのかと……」     
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