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「そもそも、この娘の親はどうした! こんな幼い少女を独りにするからこういった事態になるのだ」
子供に罪がないならば、親の監督責任だという割と真っ当なことを言うあやかしに、月はなんだかなぁと肩をすくめながらも、元三大師の言い分に寄り添う部分もあった。
そもそも、どうして一人でこんなところにくるようになったのだろう。
「お父さんとお母さんは、仕事で……いつも家にいないから」
「今の時代、両者共働きってのは良くある話だからなー」
「しかし、子供はどうする。仕事も重要かもしれんが、こんな幼い無垢な娘をほったらかしにして……」
「あ、結構この子のこと、気に入ってるんだ」
「むうっ……、心配するのは大人の役割だっ」
「ほんと、あやかしのほうが、正当なことばっかり言うんだもんな……」
先ほどの和歌が思い出される。忙殺される現代人には、ゆっくりとした時間を過ごす必要性が増えているのかもしれない。
なるほど確かに、今の時代に生きる人々に寄り添った、現代の和歌だと、改めて月は実感した。
「いつもは、おじいちゃんが……一緒に居てくれて……ここにもおじいちゃんと散歩にきてたの」
「そうだったの?」
おずおずという様子で、哀しそうに語り始めた少女に、月はまた屈みこんで少女の視線に顔を合わせる。
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