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少女は、少しだけ、涙を溜めていた。大きな瞳が、潤んでいたのだ。
「おじいちゃん……おじいちゃん……」
「……」
月は、察した。ひょっとしたら、大好きなおじいちゃんは、もう居なくなってしまったのかもしれない。だからこそ、少女はおじいちゃんの思い出を失くさないように、おみくじを燃やされないように回収していたとしたら、その小さな心にどれだけの重みを背負いながらこの神社に来ていたのだろうか。
きゅう、と切なさが月の胸を締め付けた。
「おじいちゃん、ぎっくり腰で動けなくなったの」
(逝ってないんかぁぁぁぁあッ!)
流石に口に出しては突っ込めなかったが、脳内で秒速で突っ込んでいた。
「それで、今はあたし一人でここに来てるの」
「しかし、このような都会に子供……それも、こんなにめんこい娘が……」
「……ほんと気に入ってるじゃん」
「子供はいつの世も宝だろう!」
神宮寺が声を張り上げるのだが、紅くなっているその顔は怒りによるものではないと分かる。
なるほど、どうやら、この元三大師、かなり少女を気に入っているのだろう。そう思うと、月は少しほっとした。少女に対して何か厳しい罰を与えたりしないかと内心ヒヤヒヤしていたが、その心配は杞憂だった。
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