あやかしたちと少女たち

13/14
前へ
/314ページ
次へ
「おい娘。お前の爺さんが良くなるまで、一人ではあまり出歩くな。親も心配する」 「……ごめんなさい」  しゅんと落ち込む少女はまた泣きそうになっていた。 「その、なんだ……どうしても出かけたいなら、私が付きそうから、一人では本当に危ないんだ。分かってくれんか。な?」  女の子の涙に弱いのか、元三大師は必死に取り繕ってそんなことを言うので、月と乾太郎は二人で顔を見合わせて、クスクスと笑う。  確かに、ここ池袋は人も多いし、交通量も激しい。治安のよくないところもあるから、小学生の女の子が一人でフラフラと歩き回るのは危ない。 「随分、その子にお熱なんだな、元三大師」 「……歌占(うたうら)を好いてくれた娘だ。嫌うはずもない」  歌占(うたうら)とは、おみくじに書いてある和歌のことだろう。  かつて、おみくじの始祖とされた元三大師も神のお告げを詩として伝えていた。それが今の世も残り続けていることは、彼にとって、素晴らしい縁であると言えよう。 「一安心、かな」  月は乾太郎ににこりと笑って見せた。乾太郎もうん、と頷いて白い歯をみせてくれる。  これで奇妙なおみくじの盗難事件は解決だろう。またひとつ、ここに人とあやかしの縁が生まれた。  その縁が、大きな幸を結ぶ、きっかけになればいいなと月は笑った。     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

577人が本棚に入れています
本棚に追加