マヨヒガデートはモダンレトロでハイカラ浪漫

2/12
前へ
/314ページ
次へ
「うん。私が学校に行っている間は、かんたろ、きちんと世話してよね」 「分かったよ。……ところで、この子の名前、どうするんだい?」  毛並みは真っ黒でつやつやしている。長い尻尾に黄金の目。まさに黒猫という出で立ちのすらりとしたライン。後ろ足が健康なら、身軽に塀を乗り越えたりもしていそうだった。 「サスケってのはどうかしら」 「オスだっけ」 「オスだよ。忍者みたいでしょ」 「良いんじゃないかな。サスケ」  月は感覚で名付けたが、乾太郎は素直に良いねと言ってくれた。もう少し考えてみても良かったが、サスケはなんだかぴったりだと思った。 「じゃあ、あなたの名前は今日からサスケよ。よろしくね」 「……」  ほとんど鳴かないサスケは、まじまじと月の顔を見てから、ふいと視線を逸らし、丸くなった。 「気に入ってないのかな?」  乾太郎が首をかしげたが、ネコというのは気まぐれで、大抵こんなものだ。月はそっとサスケを撫でながら、新しい同居人が、『招き猫』であればいいなぁと冗談めいて考えていた。 「いよいよお金が無くなって来たなー」  家賃、光熱費や、インターネットや電話の契約料。これを払えるギリギリの金額しかもっていない。  移動費は定期があるから、無くさない限りは学校に通う程度の範囲なら動き回れる。     
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

577人が本棚に入れています
本棚に追加