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そこで、乾太郎にサスケも一緒にマヨヒガに連れて行っても良いかと訊ねてみた。獣医から連れ出てきたように、籠に入れて持ち運べば、一緒に居られる。
「いいや、ここに居たほうが安全だよ。この部屋には貧乏神の加護がある。お金を奪い取る代わりに、無病息災安穏無事を約束されるからね」
「……ネコにも効果があるんだ、それ」
丸くなったサスケは目を閉じているようで、ぱっとみると、どこが足か頭か分からない黒い塊だった。
しかしながら、落ち着いているようで、眠ってくれている。乾太郎の言葉通りなら、寧ろ外に連れ出す方が負担になるだろう。
「じゃあ、いこっか」
「二人きりのデートだね」
「で、デートじゃないっ!」
「あはは、初心だねえ。キララちゃん、今まで彼氏いなかったんだ」
「……いーでしょ別に……、特に欲しいと思わなかっただけだし」
「恋愛も『御縁』だよ。関心をもつことは、素敵なことだ」
柔和な笑顔で、乾太郎はそれっぽいことをいうのだが、月は内心思っていた。
(それって、かんたろとの縁も、そういう意味になるかもってこと……?)
そんな風に考えると、乾太郎に対してなんだか変な気持ちになりそうだったから、月は敢えてこう言った。
「あやかしと人間じゃ、恋愛なんてできないでしょ」
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