マヨヒガデートはモダンレトロでハイカラ浪漫

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 それは一種の防衛ラインだった。乾太郎とはそういう関係にならないんだよね、という確認みたいなものだ。  別に、乾太郎と男女関係になるのが嫌というわけではない。  しかし、月には、どうもその手の話題が苦手なところもあって、誤魔化していたかった。  だって、仮に乾太郎のことを好きになったとしたら、それこそ一緒に生活していられなくなる。恥ずかしくて気が狂うんじゃないかと思うのだ。 「できるよ」 「えっ」 「古来より、あやかし、神、妖怪。それは人間と密接に干渉しあって来た。中には異種族同士で愛を育み、結ばれた話もある」 「……そ、そうなんですか。フーン」  我ながら、酷い返事だと思ったが、月は本当にもうそれ以上は何も言えなくなったのであった。  乾太郎と一緒にマヨヒガに向かいながら、隣に並んで歩いていると、妙に胸が鳴っていた。  これはデートではないぞ、月! と、自分に言い聞かせながら、歩いていたから、フラフラして、乾太郎に手を握られた。  そして、傍に引き寄せられてエスコートされると、いよいよ月は紅くなった。 「デートじゃないよ!」  手を握られて、乾太郎に思わず、反射的に言ったのが、乾太郎はその言葉で――。 「ぷっ、あははは! ほんと、初心(うぶ)だな、キララちゃん」     
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