マヨヒガデートはモダンレトロでハイカラ浪漫

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 と、大きな声で笑われてしまい、恥ずかしくて悔しくて、仕返しに、乾太郎の手を思いっきり握りつぶしてやろうと力を込めてやった。  それでも乾太郎は、手を放さず、笑顔のままでマヨヒガに連れ歩くことになったのであった。 (ちくしょう、てやんでえ、ばろめえ)  と、脳内で変な悪態をついて右手を包む乾太郎の手の大きさに抗議していた。  結局、マヨヒガへ続くエレベーターの前まで、二人は握った手を離さないままだった。  マヨヒガまでやってきて、阿吽の二人に挨拶をしてから玄関までいくと、広いロビーが出迎える。  マヨヒガは巨大な旅館という内装ではあるが、奇妙なあやかしたちの文化は、その旅館の一室一室で商いをしているところだろう。  衾は開かれ、廊下を歩く客を呼び掛けて、店に誘ってくる。  商いをしている商人たちはみな、昭和初期という服装が多い。どこか古めかしくもモダンなその情景は、平成生まれの月にすら、懐かしさを感じさせる空気を作っていた。 「あやかしたちって、服装がちょっと昔だよね。レトロっていうのかな」 「人間たちが忘れていくものを好むのがあやかしだからね。ここでは、人間社会の最新の流行が、奇抜だと思われている節さえある」     
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