マヨヒガデートはモダンレトロでハイカラ浪漫

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 挨拶をした店主は、モダンとかレトロの枠ではなく、ハイカラという印象だった。着物と袴で着飾った女性は美しく、雰囲気が独特だ。  月がそういう服装の女性を資料だとか、画像でしかみたことがないためだろう。和と洋が組み合わさった様な服装は、可愛らしさと清楚さを感じられた。 「一反木綿の、山岸さん」 「えっ、あの人が! キタローどーん、の一反木綿!?」  思わず口に出してしまうほどにギャップがあった。  まず、紹介された一反木綿の山岸が女性だということ。若くみえるその姿は恐らく上に見ても三十に届くか届かないかという印象だ。 「フィクションですから」  ころころと上品に笑う山岸は、大正浪漫の擬人化かと言いたくなるほど、絵になっている。 「すいません……」  礼儀知らずなことを言ってしまったと頭を下げて、月は改めて店内の服を見て回り出した。  ハンガーにかけられているものは全て洋服で、山岸が来ているような紫の矢絣の着物や海老茶袴はない。  ちょっと着てみたいと思わせる山岸のファッションは、ここでは売られていないらしい。どちらかというと、いわゆるモガ、モダンガールのスタイルを感じさせる。クローシェ帽がお似合いの洋服だ。 「意外と、現代で着ても違和感なさそう……」 「良いのが決まったら言ってくれ」 「ほんとに良いの?」     
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