ターニング・ポイント

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「貧乏神も、疫病神も、黒猫も。この部屋に来るのはみんな、嫌われ者たちだな」  黒猫が横切ると不吉なことが起こる。そんな風に言われてしまう風潮に、乾太郎は同情しているのか薄く笑う。しかしその目は、揺れていた。 「キララちゃん。……何があろうと、きみを必ず、幸せにするからな」  乾太郎は、そっと眠る月の顔に、自分の顔を寄せていき――、停止した。 「……」  サスケがじっと乾太郎を見つめていて、抗議しているようにも見えた。 「そうだな、ここでキスするのは、男じゃない」  乾太郎は身を引き、ベッドから立ち上がると、また静かに部屋から出ていった。ドアを閉めながら、「おやすみ。――――」と、小さくかき消えるように囁いて。  ◆◇◆◇◆  ――翌朝、何かの夢を見たはずだが、それをすっかり忘れて目を覚ました月は、ううんと伸びをすると、すぐにサスケを確認した。サスケは布団の上で丸くなっていた。 「おはよ、サスケ。朝は弱いのかな?」  優しく黒い毛を撫で上げてやって、起こさないようにそっとベッドから抜け出ると、月はドアを開けてリビングに向かった。  そこには乾太郎がいつものように朝食とお弁当の準備をしていた。  今日は大学に行くから、昼食をお弁当で用意してくれているようだ。 「おはよう、かんたろ」     
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