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「おはよう、キララちゃん。もうすぐ朝ごはんできるよ。顔洗っておいで」
「お母さんみたいなこと言って……」
恥ずかしくなってしまって、そそくさと洗面所に向かって顔を洗い、歯を磨く。
洗面所の歯ブラシ置き場に並んでいる二つの歯ブラシは、それぞれ赤と青。赤が月のもので、青が乾太郎のものだ。
こういう何気ない物が、男女の同棲生活を濃厚に見せていて、月は視線を泳がせる。
(この部屋に、友達は呼べないな)
まだ大学生活は始まったばかりで友人らしい友人は出来てないが、部屋に誰かを入れることは絶対にできない。誰がどう見ても、愛の巣窟みたいな生活感が色んな所に現れてしまっていた。
乾太郎とはそういう関係じゃないと説明したって誰も信用しないだろうし、月がもしそう説明されてもノロケにしか聞こえないと思った。
洗顔してリビングに戻ると、すでに朝食は出来上がっていて、テーブルにはサンドイッチとサラダが綺麗に飾られるみたいにして並んでいる。そして温かいポタージュスープがカップから美味しそうな香りを上らせていた。
「朝ごはん、乾太郎っていつもしっかり作ってくれるよね」
「料理は趣味だからなぁ。もっとシンプルなほうがいい?」
「ううん、凄く美味しいし、嬉しい……」
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