ターニング・ポイント

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 乾太郎の朝ごはんはいつもきちんと作られている。和食も洋食も手間をかけていると一目見れば分かる出来栄えだ。  月は高校生時代、朝食なんて、焼いたトーストにマーガリンをぬって食べたり、フレークにミルクを入れて食べたり、ご飯にタマゴかけで済ませたり程度が多く、食事はパパっと済ませて朝の支度をすることが多かった。  正直なところ、乾太郎には料理の腕が敵いそうにないと彼の料理を味わう度に思い知る。  だから、月は乾太郎には料理を作ってあげるなんてことは言えないなぁと、少しだけ落ち込むところもあった。贅沢な話だとは思っているが、ほんの少し思うのだ。自分の手料理を食べたら、乾太郎は喜ぶのかな、と。  考えてみると、乾太郎には色々と身の回りの世話をしてもらってばかりで、月からは乾太郎に何かをしてやったことはない。  貰ってばかりなのは、月のポリシーに反する。やられたらやりかえせ。一発は一発だ。そういう信念があるので、月は少しばかりむずむずするものがある。 「ニャー」 「あ、サスケ起きた。ベッドから降りられないのかな。ちょっと行ってくるね」  寝室に行くと、サスケがベッドの上で鳴いていた。サスケは後ろ足がまともに動かない。健康なネコなら平気でぴょんと飛び降りることができるベッドすら、飛び降りることが困難らしい。     
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