ターニング・ポイント

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 月はサスケを抱きかかえると、そのまま胸に抱いてリビングに戻って来た。  朝食が並ぶ中、乾太郎はサスケ用の皿に猫缶を開けて差し出した。 「これで家族揃って、一家団欒の朝食だ」 「家族……か。うん、そだね。へへ」  こそばゆいけれど、悪くない。乾太郎とテーブルをはさみ、隣にはサスケ。  立派な家族の姿だろう。これもまた、一つの幸せだった。  そっと口にしたポタージュは温かく、朝にぴったりなクリーミィな味わいだった。優しく温かいスープの味は、乾太郎の掌みたいだと思ってしまって、頬がぽかぽかしてくるのだった。  サスケもマグロの缶詰を美味しそうにバクバクと食べ始め、食欲旺盛なことを見せびらかせる。どうやら、元気いっぱいなようで、乾太郎とふたり、その光景に笑顔を零した。  ◆◇◆◇◆ 「……その話、本当かァ?」  威圧感のある男の声に、(かしず)いているあやかしは、「ハイ」と緊張した声で頷いた。  その返事に、面白そうに目を剥いて、ニタリと口角を吊り上げた男は、胸元を大きく開けた和服を着ており、高圧的な眼光を光らせている。そのかんばせは妖刀のように鋭くも荒々しく、そして洗練された美も兼ね備えていた。赤い髪は彼の性格を表すかのように刺々しく、好戦的な印象が窺がえた。     
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