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はぁ、と大きなため息を吐き出し、乾太郎のお弁当を食べきって片付ける。まだ午後から講義の枠はある。今日は家に帰るのは夕方を過ぎるだろう。乾太郎には帰りが遅くなることを伝えている。
しかしもっと仕事をしなくてはという焦りが膨らみ、月はマヨヒガに顔を出して、依頼を捜してみようかと考えた。
大学の講義は無理に全て受ける必要はない。今日休んだところは別の枠で埋め合わせるというやり方で賄える。
今は、しっかりと生活基盤を作ってしまう方が大事だと思った。
「よし、やっぱり仕事しよう」
月は決断して、大学を後にして、池袋へとやってきた。展望台へと上がるためのエレベーターであるマヨヒガへの入口へと。少しでも仕事をしようと思ったのだ。
六十階建てビルのエレベーター乗り場で、マヨヒガ行のエレベーターに乗ると、添乗員である森岡奈和が月に会釈する。
森岡奈和も、あやかしだ。まさに、異世界エレベーターという都市伝説があやかしと成った存在である。
――異世界エレベーターの都市伝説は、ここ最近話題になった都市伝説で、特定の手順を踏むことで、エレベーターを使って異世界に行くことができるというものだ。
その方法は、まず十階以上あるエレベーターを利用すること。乗りこんだら、四階、二階、六階、二階、十階と移動する。
十階についたら、降りずに五階のボタンを押し込む――。
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