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男が歩き出し、月はその後ろについていく形で、見知らぬ廊下を歩きだした。
(ここ……もしかして、マヨヒガの上階?)
マヨヒガは、いつも外から中に入り、一階しか歩き回ったことがないが、周囲の雰囲気から、今この歩いている廊下は、マヨヒガの上層階ではないかと考えた。
一階の廊下と同じ木目の廊下は、良く磨かれていて綺麗だった。そして周囲の壁の造りもマヨヒガ一階のものと似ている。
しかし、所々に装飾が彫り込まれており、何やら豪勢な雰囲気が満ちていた。見上げると天井には細かく描かれた絵画が廊下に沿って描きこまれている。それは、鳥獣戯画のような独特なセンスを感じさせる絵画で、どうやら描かれているのは無数のあやかしたちのようだ。
一つ目のものや、羽のあるもの、舌が長く伸びているものや火炎を吐き出しているものなど、異形の数々が、長い廊下の天井に、描かれている。
一階にはない大きな通路で、金や銀の装飾で縁取りをされた衾など、特別な空間――いわゆるVIP用の階層ではないかと想像できる。
マヨヒガの上には行くなと乾太郎が、鬼気迫る表情で注意をしていたのを思い出す。
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