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憂きに堪へぬは 涙なりけり
「雲母さんっ……よかった……!」
「奈和、さん……」
酒呑童子の上層階から、異世界エレベーターに戻り、月を迎えた奈和は、涙を溢れさせて、月を抱擁した。
月は、異世界エレベーターの中で、奈和の抱擁にどうこたえていいか分からず、奈和が落ち着くのを待って、訊ねた。
「……奈和さん。どういうことなの事情を説明して」
「はい……全てお話します」
異世界エレベーターそのものが、奈和の正体だ。エレベーターは停止していて、二人きりの密室になっていた。
月の声に、奈和はまず深く詫びをして、語り始めた。
「……私のような生まれたばかりのあやかしは、大御所とされるあやかしたちに認められるため、怪異として、存在を示さなくてはなりません。実力を計り、他のあやかしたちに認められると、正式にあやかしとして、ここマヨヒガを利用することを許されます」
「要するに……テストに合格しなくちゃ入れないってこと?」
「はい。私はその試験に合格をして、今こうしてここで働いております」
「……認められてるなら、堂々としていればいいんじゃないの? あの鬼の言いなりになってるみたいに見えた」
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