憂きに堪へぬは 涙なりけり

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 自分が危険な目にあったこともあり、少しだけ、月は奈和を突き放したように言う。ここで、気にしてないよと言えるほど、人間ができているタイプではないのだ。  申し訳ないと言い、奈和は青ざめた顔で謝罪をした。 「酒呑童子さま……四十万さまは、このマヨヒガでも最上級のあやかしです。彼に睨まれては暮らしにくくなってしまうため、弱いあやかしはできる限り、彼に目を付けられないように暮らしております」 「暴君ってことか」 「先日、四十万さまの使いの方が、私に指示したのです。雲母さんをマヨヒガの上階へと連れてくるようにと。断れば、なにをされるか分かりませんでした……。怖くて……私……すみません!」  本当に怯えきっていたのは、月も分かっていた。それほど、あの酒呑童子の実力は大きいのだろう。  日本を代表する大妖怪に睨まれては、近代に生まれたばかりの都市伝説では竦みあがるのは無理もない。  例えるなら、強大な権力を持った悪徳政治屋が、小学生を虐めるようなものだろうか。 「胸糞悪いなぁ!」  汚い言葉使いが出てしまったが、それだけ月も憤っていた。権力や力があれば何をしても赦されるとでもいうのか。弱肉強食なんて蛮族の思想でしかない。 「あ、あの、雲母さん。どこかお怪我などありませんか」 「ああ、うん大丈夫。話だけだったし。それもどうでもいい話」     
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