憂きに堪へぬは 涙なりけり

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 乾太郎も、そのあやかしの中の一人だ。  普段優しい彼が、豹変した瞬間を経験していた月は、乾太郎の中にある『畏怖』を知りたくなかったのだ。  約束を破ったとしった乾太郎が、月に対してどんな態度を取るのか、分からなくなってしまった。 「ちょっと、考えてみる」  今は、自分も突然のことで冷静な判断ができない。すぐに乾太郎に相談するより、自分の中で今起こった状況を落ち着いて考えてから、乾太郎に話すべきかを決めるべきと結論を出した。  奈和は、まだ乾太郎に話したほうが良いと勧めたが、月は首を横に振って、一人になりたいと告げた。  一人きりでじっくりと考える時間が欲しい。  ヒントはある。  飛燕が捜しているという百鬼夜行の絵巻物だ。  その調査をしながら、酒呑童子である飛燕の動向に気を配っていればいい。あのいけ好かない鬼の依頼を受けてやるつもりはさらさらないが、百鬼夜行絵巻を調べることで、飛燕に対してアドバンテージを取れる可能性も出てくるだろう。  もしまた拉致された時、交渉の材料のためにも、百鬼夜行絵巻を調べておくのは必須だろう。     
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