憂きに堪へぬは 涙なりけり

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 どうでもいい、と飛燕は言った。  拍子抜けするほど、あっさりと言った。あれはブラフなのだろうか。  奈和も言っていた。月自身が目的のように思えたと。月も、驕りでないならば、そんな気はしていたのだ。勘、という程度のものではあったが。 (だとしたら、何が目的だったんだろう。人間の女がマヨヒガで調査員を始めたことが目についた? 他人を見下しているあの男が、態々私に目を付けた理由はなんだ?)  あやかしインベスティゲーションは、元々、乾太郎の提案で始めた仕事だ。  あやかしのための、人間社会での困りごとを調査するための事務所。それがあやかしインベスティゲーション。  その仕事を通じて、あやかしたちとの縁を深めていくことで、『五円』を貰うことができる。その五円は、単なる五円ではなく、あやかしの通貨であり、縁結びの印のようなものだ。  その縁を円に換えることで、月は貧乏神の能力でお金を失われないと説明された。しかし、今のところ、縁が円に換金されてはいない。相変わらず、月は火の車である。  乾太郎のことさえ、このまま信じていていいのか分からなくなってきそうで、思考が嫌な想像を組み立てていく。     
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