憂きに堪へぬは 涙なりけり

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 しかし、どうしてこんなにも悲しんでいるのか、理解ができなかった。  自分の中に生まれている感情なのに、それはまったく知らないところで造られて、この胸の中に投げ出されたみたいに、不意に現れた。  フクロウの親子像の隣で、月は声もなく、涙を零し続けた。  太陽は紅く沈み行き、空は暗い青の絨毯を張り巡らせる。ビーズのような星と、青白い月が都会の光に惑わされている。  空を見て泣く月は、その涙の止め方も分からなかった――。
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