心の余裕をくれるモノ

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 今日は大学で一日時間が潰れるから、帰りが遅くなると出かける前に言っておいたから、乾太郎は月が、大学で何かストレスをため込んで来たのだと思い込んだのかもしれない。 (やっぱり、四十万の部屋に行ったことに気が付いてないんだ。あの部屋は貧乏神の能力の範囲外って、本当みたい)  バレていなくて良かったという気持ちと、真実を伝えたほうが良いのだろうかという呵責が、胸の中で言い争いを初めていたが、乾太郎にはまだ真実は伝えないという気持ちが勝った。 「……かんたろ、ちょっと生々しいこと言っていい?」 「なんだい」 「大学でやっていくのに、色々と、その、要り様で」 「ああ――、お金に困ったのか」  その悩みもまた真実だ。下手な嘘で誤魔化すより、本当のことを持ち出す方が相手には自然に伝わるだろうと考え、月は金銭に困っていることを伝えた。  本来なら、そんなことを乾太郎には言わなかっただろう。お金がなくて困ってます、なんてあんまり人には言えない。  しかし、マヨヒガの最上階に行き、酒呑童子と会ったことを伝えるよりは余程マシだったから、月は『見抜かれちゃったか』という演技を交えた。 「ほんと、人付き合いにもお金って必要だよね。……大学の同じ講義受けてた人たちに、遊びに行こうって誘われたんだけど、私すっからかんだから、行けなくて」 「ごめん、オレのせいだ」     
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