心の余裕をくれるモノ

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「い、いや、乾太郎のことを責めてるわけじゃないよ。でも、このままじゃマズイなって考えてたの」  そこまで言って、月は一呼吸置いた。二人の間に微妙な沈黙が流れて、腕の中で抱いているサスケがちらりと月を一瞥した。金色に薄い緑が混ざった様なサスケの目は、きらきらしていて、美しい。 「かんたろが、前に言ってた、『換金』っていつ、できるの?」  ぽつぽつと言葉を切りながら、月は伝えた。  あやかしインベスティゲーションの稼ぎは、きちんと貰えるのかと問い詰めたわけだ。あまり、お金に関して踏み込んだことを言いたくなかった月は、その言葉を伝えるのにエネルギーを必要とした。  吐き出したあとに、妙なストレスが心を叩いていく。まるで乾太郎を疑っていると、伝えているようにも聞こえるからだ。 「なるほど、お金がなくなり、余裕を失い疑心暗鬼に陥ったってところかな?」 「う……、正直に言うと、その通りかも」  お金がないと、人は幸せになれない。そんな風には考えたくはないが、お金がないと社会に加われない。つまはじきものにされるのだ。お金はコミュニケーションツールの一つなのは紛れもない事実だ。  お金なんか要らないなんて、口が裂けても言えない。  見返りを求めない美学なんて、愚の骨頂だと言い切れる。     
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