心の余裕をくれるモノ

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「あやかしインベスティゲーションでのお給料は、この部屋の家賃引き落としの日に、振り込まれる」 「振込!? 銀行の通帳に!?」 「うん、オレが振り込む」  真面目な顔をして言う貧乏神。  月は色々と想像してヒクついた笑みで応える。 「四万円が家賃。その他光熱費だとか通信費用の支払い、もろもろがそこから差し引かれることになる。それでも余った金額が、キララちゃんが来月自由に使えるお金になる」 「……」  本当に、振り込まれるのだろうか。もし、お金がないまま家賃の振り込みが行われないと、この部屋から出ることになる。  そうなったらもう、裸一貫で都会に放り出されるようなものだ。 「本当に、きちんと振り込まれるのか不安って感じだね」 「……ごめん」 「謝ることはないさ。でも、オレも信じてくれとしか言えない。今月はキララちゃんに苦しい生活を強いることにはなるけどね」 「分かった。月末まで、待つよ」  そういうしかない。オレを信じてくれ、なんて言われてしまったら、月は頷く以外に返事はなかった。  乾太郎はキッチンに戻り、鍋を火にかけ、温めなおしながら、中身をかき混ぜていく。  香ばしいスパイスの香りが、空腹を刺激する。 「カレー?」 「ピンポーン♪ キララちゃん、辛口いけるほう?」 「実は、結構な辛党だよ」     
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