心の余裕をくれるモノ

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「やっぱり、そんな気がしてた」 「なんだよもー。私、辛党みたいな空気だしてるってこと?」  微妙な空気はその後なくなった。  普段の日常会話がやり取りされて、二人の間に笑顔が咲く。 「キララちゃん、食事が終わったら、その……ちょっと一緒に、さ」 「うん? なに?」  カレーをかき混ぜながら、乾太郎は鍋の中を見つめつつ、月になにやらハッキリしない態度を見せた。  あんまりそういう彼の姿を見ないから、月は首を傾げた。抱き締めているサスケが、前足をばたつかせだし、そろそろ放せと抗議していたから、そっと床の上に解放してやる。 「ええと……」 「?」 「ああ、もう、なんだ。だから……!」  何やら妙に苦悩している様子の乾太郎に、月はますますきょとんとしてしまう。ムズ痒そうにしている乾太郎は、鍋から離れて、月のほうにやってくると、妙に強張った顔をしていた。 「キララちゃん。その……オレが、賄うからさ」 「え、な、なにが? 何の話?」 「だから、大学で友達付き合いできなくて、参ってるんだろ?」 「あ、うん……賄う? かんたろが? へ?」 「泣いてたんだろ」 「っ――」  泣いて帰って来たことを、バレていた――。     
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