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「きみ、チャキチャキじゃないだろ」
恥ずかしすぎて、照れ隠しもまともにできなかった。
月と呼んでいいと言ったのは自分だし、恥ずかしいのは本当だったが、そんな風に名前を呼ばれるのが、恐ろしいほどに嬉しい。
「な、何の用かって聞いてんの!」
「名前、呼びたかっただけ」
「~~~~っ」
導火線に火がついていたとしたら、その導火線は短すぎた。アッと言う間に月の中の慕情が爆裂して、頭の中がドカンドカンとうるさくて、何が何やら分からない。
どんな顔してそんなこと言ってのけるのだろうかこの貧乏神は、とチラりと盗み見た乾太郎の顔が、嬉しそうにしていたから、月もなんだか嬉しくなってきてしまう。
(やばいよ、これ……幸せだ)
嬉しい、幸せだった。乾太郎が、嬉しそうな顔をしているのを見るのが、とてつもなく素敵で、自分の中の心がどんどん燃え上っていく。
(私……、好きになってるよ……かんたろのこと――)
恋心というものを、きちんと確認した。生まれて初めて、誰かのことを愛おしいと自覚した。
乾太郎が、幸せそうにしているのを見ると、こっちまで嬉しくなってくるのは、紛れもない恋心のせいだ。
(なんで? なんで、こんなに好きになっちゃったの? 貧乏神だよ?)
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