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お腹もいっぱいで、あとは睡眠欲が顔を出す。疲労感がお湯の中にデトックスされていくような感覚に酔って、月はそのまま、かくん、と意識を眠りのなかに誘った――。
「キララちゃん! キララちゃん!」
身体を揺すられていることに気がついて、「うー」と呻いた。
せっかく気持ちよく眠っていたのに、無粋なことをする無法者めが、と両腕で叩きつけてやろうと、気だるさの中でもがく……。
「ううー。う……?」
ぺたん、と自分の手が、誰かに触れた。そしてその手を、きゅ、と握られた。
「キララちゃん! 大丈夫か?」
「あ、あれ……」
「目が覚めた……、はぁぁ、焦ったよー……」
ううん、と身をよじりながら朦朧とする頭を抱えて、月は起き上がった。
ひんやりしている床に寝そべっていたらしく、ここがバスルームの脱衣所だと分かった。
「えっ!?」
そして自分の状況に慌てた。お風呂に入っていたはずなのに、上がっていて、バスタオルが身体に巻かれている……。
もしかしなくても、お風呂で寝落ちしてしまったのではないか。
「お風呂で寝たら、危ないよ。疲れていたんだろうけど、全然上がってこないし、声をかけても無反応だし、ぞっとした……」
心底心配した様子の乾太郎は、ほっと胸をなでおろしていた。
「えっ? ……私……お風呂にはいって、寝てた?」
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