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ベッドに横たわる幼い自分は、治療の後が痛々しく残り、全身が包帯とガーゼに包まれている。その呼吸は非常に浅く、危険な様態だと分かる。
(これ……私が事故にあったときの……夢?)
明晰夢というものがある。夢の中で、夢と気が付くことをそういうらしい。明晰夢のなかでは、その夢を自在にコントロールできるというが、今月が見ているその光景は、まるでそんな自由さはなく、まるで上映されている映画みたいに物語が綴られていくだけだ。
ベッドの中で意識を失っている幼い月の周りには、二人の男性が愁いを帯びた瞳で、『自分』を見つめていた。
その男性を、月は知っている。
貧乏神の乾太郎と、疫病神の蔵馬だ。
「お前のせいじゃないよ」
蔵馬が、口を開いた。
「厄が溜まり過ぎていた。天中殺だった」
誰にも責任はないと、蔵馬は哀しそうに、呟く。
天中殺の意味は分からなかったが、今、この場に居るみんなが、やりきれない思いでいっぱいなのは分かる。
「……蔵馬。オレも……この娘を救いたい」
「カデノコ……お前のせいでもないと言っている」
「誰かのせいだとか、責任で言ってるんじゃない……ッ」
激情を押し殺したような乾太郎の声に、蔵馬は項垂れ、苦しげにも言葉を繋げていく。
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