あやかし恋慕

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「……しかし、この子の命はもう風前の灯。貧乏神のお前の加護で救うとなると、この娘に憑りつくしかない。そうなれば、この子の将来は、金に苦しむことになるぞ」 「……分かってるッ……。それでも、この子が死ぬよりはずっといい!」 「金銭が、人間にとって、どれほど必要不可欠なものか、お前が一番知っているだろう!」 「……ッ」  乾太郎は歯を食いしばり、血がにじむのではないかと言うほど、硬く拳を握りしめ、己の不甲斐なさに苦悶していた。貧乏神として、瀕死の少女の命を救えば、その代償は一生金に困り続け、破滅するだけの人生を歩むことになる。  蔵馬も同じように、下唇を噛みしめ、痛々しい表情を浮かばせる。疫病神である自分では、少女を救うことができないと歯がゆさでいっぱいだった。  蔵馬もまた、ベッドで横たわる少女を救いたいと願っているのだろう。それが二人の様子からよく分かった。 「あたしが、この子を助けます」  夢の中の主観である『自分』がそう言った。 「あたしの魂を、この子にささげます」 「しかし、そうするとお前は、かき消えてしまう……」 「かまいません。このまま生きていても、あたしは何も残せず消えてしまうから。だから、命の使い道を、ここにしたいのです」  夢の中の『自分』は、清々しいほどにきっぱりと言った。     
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