あやかし恋慕

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「……夢……見てたのに……なんか思い出せない」  確かに、何かを夢見ていたはずだ。この涙はその証拠だろう。  夢のなかで、乾太郎と、蔵馬がいたような気がする。最近知り合った仲のいいあやかしの夢をみただけなのだろうか。  しかし、この胸を切なくさせている余韻はなんなのだろう。  以前も、不意に涙が溢れて止まらなくなったことがある。  今、涙を零した理由は、夢にある。  そして、一番最初に同じ涙を流した時は、百鬼夜行絵巻を見た時だ。 「百鬼夜行絵巻と、今見た夢……。何か意味があるのかな」  何かが欠けているような気がしてしょうがなかった。大事なものを忘れきっていて、それに触れるたび、この頬を伝う涙が溢れるのを止められなくなる。  色々なものが、何かで繋がっているように思い始めていた。  それこそ、『縁』があるのだと感じざるを得ない。  酒呑童子の依頼。涙の理由。夢の中の乾太郎と百鬼夜行絵巻。 (……もう一度、きちんと見てみれば分かるかもしれない)  百鬼夜行の絵をみたいと思った。  それを見る手立てはある。マヨヒガの最上階の天井に描かれているのだ。  あれをきちんと見ることで、何かが分かるように思った。  乾太郎からは行くなと言われたマヨヒガの上階。     
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