百鬼夜行の一番『後ろ』

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(だからこそ、かんたろが隠しているものを、私自身が忘れているものを、ハッキリさせないと)  真っすぐに月は視線を向け、凛々しく背筋を伸ばす。 (私は、あいつに好きだと言えない――!)  月は、自分でも単純だと思うほど、ストレートな感情が行動理由となっていた。  展望台エレベーターの前で、奈和を呼び出すと、月は酒呑童子の階層に連れて行くように頼んだ。  奈和は、逡巡したが、月の頼みを聞き入れた。  マイナス五十階に異世界エレベーターは止まる。扉がすぐに開くかと思ったが、奈和が扉を開ける前に、月を心配そうに窺った。 「本当に宜しいのですか? また、四十万さまに捕まれば、今度は何をされるか……」 「そういう奈和さんは、何かされたの? あいつに」 「い、いえ。私は何も……でも、四十万さまはかつて、若いあやかしを徹底的に迫害したこともありますので……」 「……あいつのことは確かに好きじゃないけど、まだ私が直接嫌なことをされたわけじゃない。迫害されたあやかしのことを知らないから言えるのかもしれないけど、私はまだ四十万飛燕は恐怖の対象にはならない」  きっぱりと言う月に、奈和は押し黙った。 「別に酒呑童子に会いに行くわけじゃないわ。天井の百鬼夜行をみたいだけなの」     
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