577人が本棚に入れています
本棚に追加
「……分かりました。扉を開きます。……それから、私も一緒について行っても宜しいでしょうか」
「え? 奈和さんが?」
まさか奈和がついて来たがるとは思っていなかったので、月は目を丸くした。この階層に足を踏み入れることさえ怖がっているように思ったのだ。
「せめてもの、お詫びに……お手伝いをさせてください」
奈和は、先日、月を罠に嵌めたことを悔いているのか、罪滅ぼしのために協力を申し出てくれたらしい。
「でも、酒呑童子と鉢合わせするかもしれないよ」
「それは……そうですが、それでも……何かお力になりたいです」
純粋な想いが、奈和の目に浮かんでいた。恐怖はあるだろうが、月に対して、これからもきちんと向き合いたいから、彼女はそんな協力を申し出てくれたのだろう。
後ろめたい気持ちを抱えてこれから過ごすことよりも、これからまた一緒に歩みたいという奈和の気持ちに、月は頷いた。
「ありがと、奈和さん」
「百鬼夜行の天井画の調査、頑張りましょう」
月は、そっと右手を差し出した。握手を求めたのだ。
奈和は、少し驚いた貌を浮かべたが、その手をとり、笑顔を見せてくれた。
そして、エレベーターの扉が開く。そこはあの時黒服のあやかしと共に歩いた廊下で間違いない。
最初のコメントを投稿しよう!