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その絵を見ながら、月はやがて廊下の一番奥に辿り着く。天井絵も、そこで終わりを迎える。色々な妖怪変化が描きこまれた百鬼夜行の最後はどんな妖怪なのだろうと少しワクワクしながら、最後尾に描かれたものを見上げた。
「……これ、は……」
最後尾、天井の絵の一番最後に描かれていたものは、妖怪ではなかった。
大きな赤い、球体が描かれていたのだ。
「百鬼夜行は、夜を行軍するあやかしたちを描いたものです。そのため、最後は夜明けが描かれております」
奈和が解説をしてくれた。つまり、最後尾に描かれているこの赤い球体は『太陽』を意味しているというのだ。
日の出と共に、あやかしは去るという意味を込め、百鬼夜行絵巻は終幕となっている様子であった。
「これ、は……!」
真っ赤な球体。あやかしを退ける夜明けの太陽。
それを目にした時、月の中にあった奇妙な感覚が激しく脈打ちだした。ドクン、と心臓が跳ね上がり、口から飛び出るかという程、身体を震わせる。
カチカチと奥歯が鳴っていた。痙攣しているのだと、自覚して、月は自分が前後不覚になっていることに気が付いた。
目の前がグルグルとして、立っていられない。
「月さん……? 月さんっ!?」
直ぐに奈和がよろけた月を支えた。激しい眩暈と、呼吸困難で、喉からひゅうひゅうと、音を出している。汗が止まらず、身体の震えが激しくなって、いよいよ月はその場に倒れ込んだ。
「うぁあ……!」
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