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空亡のあどけない容姿は、現代に生まれた少女という風貌で、可憐でありながらも知的なかんばせを纏わせていた。外見年齢は小学生くらいの少女だったが、その力は目を見張るものだった。
「マヨヒガだぁ」
無邪気にはしゃぎ辿り着いたあやかしの里で、空亡は早速、他のあやかしたちに仲間入りしようと、大きな旅館のような幽世の建物に入っていった。
周囲を見回せば多くのあやかしが、和気あいあいと暮らしているのが目に入る。
空亡は、身近にいたあやかしに声をかけて挨拶をして回っていた。
「こんにちは、あたし、空亡と言います。これからよろしくお願いします」
「生まれたばかりのあやかしかい? だったらまずは、協会に行って手形を貰う所からだね」
声をかけたあやかしは親切にそう教えてくれた。さっぱりとした清潔感のあるシャツを着こんで、落ち着いた雰囲気の男性だった。黒々した髪の毛が艶やかで、それに正直言って美形だった。
「オレは、貧乏神の勘解由小路乾太郎。よろしく」
「貧乏神さまですか! こんなあたしに、親切にしてくださってありがとうございます」
貧乏神はあやかしの中でも上位に位置する存在だ。何気なく声をかけて回っていた自分に、親切な対応をしてくれたあやかしが、まさか神様クラスのあやかしとは思わず、空亡はぺこりとお辞儀をした。
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