最強の妖怪『空亡』

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 乾太郎が案内してくれて、あやかし協会までは難なくたどり着けた。マヨヒガの二階にその事務所はあり、そこで簡単な手続きを踏めば、マヨヒガ内で生活や商売をすることもできるのだそうだ。 「商売なんかできるんだ」 「ああ、あやかしは縁を糧に暮らすからね。要するに助け合いを重んじるのがマヨヒガのルールだ」 「助け合いですかぁ。素敵ですね、あたしもやってみたいです」 「どんなことがしたいんだい?」 「うーん。まだわかりません」 「そうか、まぁゆっくりと考えると良い。我らには時間なんて無限にあるからね」  朗らかな声で言う乾太郎に、空亡は少しだけ顔を紅潮させて、緊張した笑顔を浮かべた。  立派なあやかし様だと、乾太郎に憧れたのだ。 「さあ、ここで自分の自己紹介をするだけだ。オレはもう用事があるから失礼するけれど、頑張るんだよ」 「ありがとうございます、貧乏神さま」  深くお辞儀をして、空亡は頭を垂れた。乾太郎は手を振りながら、その場から立ち去った。 (ようし、がんばるぞ)  こぶしを握って、気合を入れると、空亡はあやかし協会事務所の衾を、そっと開いて覗き込む。  あやかし協会事務所はその和風の部屋造りに反して中には沢山の電子機器が置いてあり、パソコンのモニタが煌々としていた。  何人かのあやかしが、パソコンを眺めながら、キーボードをカタカタ言わせているが、何の作業をしているのか空亡には分からない。     
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